<沼田市の歴史的・文化的資産と基盤整備の共存の考え方>
これまでの街の成り立ちが一掃される「土地区画整理事業」を前に、その「土地の記憶」(歴史的・文化的資産)を留めるスポットを計画的に配置して、スポットどうしのネットワークづくりを構想する必要がある。
街を再整備する上で、安全・快適性・合理性が目的とされるが、地元市民が新たに出来上がる街に誇りを持ち、これまで通り(それ以上)のコミュニティが形成されることを目指さなければならない。
建物の経済的有効活用を基盤整備の基本とせず、これまでの沼田独自のスケールや建物の歴史的形式をデザインコードとして、新たな建築の指針とする必要があると考える。
<具体的提案>
・「土地区画整理事業」により失われるであろう沼田の「土地の記憶」を保持するために、沼田オリジナルのデザインコードとして、「軒の高さをそろえた下屋」と「路地空間」、それに伴う「小さなスケールの街並」を提案する。
・国道120号線に対して敷地のほぼ中央に「旧沼田貯蓄銀行」を、両サイドに下屋のある町家形式の建物を配置して記憶の中のファサードを構成する。
・町家東棟と「旧沼田貯蓄銀行」との間の外部空間、町家西棟内部の「通り土間」を用いて、それぞれ南北を貫く「路地空間」を作る。
・両サイドの町家形式の建物は、木造の架構に切妻の瓦屋根+金属葺きの下屋によって覆われ、その覆いの中に「路地空間」が形成されるように諸室を分散配置する。その「路地空間」は生方記念文庫に訪れる人以外の人も自由に通り抜けできるものとする。
・町家東棟は、ミュージアムカフェ&ショップ、それに外部の休憩スペースを設けて広く市民に開放する場とし、奥まった町家西棟には、有料の展示スペースとトイレ+事務管理棟を配置する。それぞれの諸室は「通り土間」や外部通路でつながれる。
・両サイドの町家東棟・西棟をつなぐ外部通路の庇によって、「外部広場」が視覚的に分節されるとともに、「旧沼田貯蓄銀行」を低層の建物によってコの字に囲みながら、街のスケールに応じた広場空間を作る。