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photo:Hirotoshi Takeuchi

多気の住宅・・「光室」のある崖下の住宅    竣工日:2002.09

所在/栃木県宇都宮市  用途/庫裏  家族構成/夫婦+子供1人  
構造・規模/RC造 地下1階地上2階建 
敷地面積/2,730.08m2  延床面積/242.26m2  建築面積/126.50m2
地域・地区/市街化調整区域 指定なし

Concept 

この住宅の敷地は,西から東に下る山の斜面にある。その南側は高さ9.5m+4.7mからなる既存の擁壁で塞がれており,西側には急な斜面が迫っている。
崖下ということもあり,法規制上構造は強靱なコンクリートの箱とせざるを得ず,そういったいろいろな閉塞感が漂う条件の中で,様々なことを突破しつつ,光に溢れ風が通り過ぎる新たな環境をこの地に作ることが要求された。
このように日当たりの悪い敷地では,中庭のようなコートを設けて天空からの光を建物内に取り入れるのが定石であり,この住宅においても,「光室」とよばれる内部化した光のコートを建物の中心にセットすることにした。
この「光室」は,半地下のホビールーム・1階の寝室・中2階の居間+食堂+台所・2階の寝室といった各居室に光を供給しつつ,それぞれを連結させるための核となるスペースであるのだが,そこは移動の場であり,くつろぎの場であり,学習する場でもあるといった,住宅の機能としては曖昧な場となっている。
そしてそのように,「光室」を屋上緑化による外部空間から内部空間へと連続する大きく緩やかな場としたことが,日常の様々なところで<自由>という快適性を獲得する突破口になったと思う。それと同時にこの大きな空間は,各居室に対してのバッファーゾーンに機能しており,内部の環境制御の上でも快適性を確保する要因となっている。
具体的には,各居室と光室に面する可動式の折戸障子を開け閉めすることにより,光室の気積を利用して,簡単に室容量を大きくしたり小さくしたりすることができるといったことである。そんな実に単純なことが,室温調整・換気/通風においてこの建物全体に大きなメリットをもたらしている。
天井の木製ルーバー・壁の白い珪藻土・障子の建具・床の大理石,といった自然素材で囲まれた「光室」は,空間自体ぼんやりとホワイトアウトしているが,そこに<生活>という物と行為が持ち込まれた時,生活者独自のライフスタイルが鮮明に浮かび上がってくる。その中で見つかる発見や環境の変化がもたらす多様性が,この住宅での快適性なのではないかと考えている。

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