photo:Yuji Satoh
これからの住宅という建物のあり方として、その家族が消滅または解体した時点でも壊されずに、何らかの方法で転用されていくものという社会認識が今後ますます広まっていくと考えらる。現時点では、その実例として「シェアハウス」や「グループホーム」といった用途が定着してきた。(現時点では新築のシェアハウス例は少ない)今回のプログラムでは、「シェアハウス」の先に「テラスハウス」への転用も求められたが、さらにその先には元に戻って「2世帯・3世帯住宅」といった昔の大家族の家が浮上してくるのかもしれない。現段階でも、家族や親類という枠にこだわらず、むしろ他人同士の「一つ屋根の下の共同体」に共感を持つ人が増えており、今後はシェアするための共通テーマごとにその形体が分化される傾向にある。 |
計画上重要となるのは「一つ屋根の下の共同体」の構造が、昔のようなリーダーのもとでのツリー構造に代わって、ある共通意識のもとでのネットワーク構造となっていることの理解である。さらにそれは外部社会へと連続しているという認識。 |
そこで、私が始めにこの住宅をイメージしたのは、この建物内外のいろいろな場所で、同時多発的に何かの出来事が起きているといった姿であった。しかしそれが、個室内の閉じた出来事ばかりということであれば、そこはすでにシェアハウスではない形式の建物(既存の共同住宅など)ということになる。個室はできるだけ共用部に開くようにしなければならず個室にこもりやすい構造にはなってはならない・・しかし、それらのことで中心的な共用部にばかり導く強い形式となることも避けたい・・それらのことを考慮して、共用部を、強い中心性を持った場所だけで完結せずに、中心から少しズレたところ、少し距離をおいたところにも住人の居場所となるような曖昧な場所を作ろうと考えた。今回の設計では、個室内外の開口と共用部との隣接の仕方や、「縁」と呼んでいる廊下を変形させたスペース、ダイニングが外部へ延長されるテラスやその先の菜園らが、それらを具体的に構成していく。 |
そして、そこで目指したかったことは、それらの場所で日常の出来事が繰り返されること。それらがここでの空間とともに住宅の記憶として積重ねられていくということであった。 |
参照サイト:ひつじ不動産 |